早期離職とは?実態、企業に与えるデメリット、原因、発生させない対策7選を紹介
更新日:2024年09月29日
公開日:2024年09月29日
入社した社員が早期に離職してしまうと、人材不足や採用コスト増など企業の損失につながります。早期離職は入職者の約3割とも言われており、どの企業にとっても悩みの種なのではないでしょうか。
この記事では、早期離職の実態、企業に与える影響、離職の原因について解説しています。早期離職を発生させないための対策についても紹介しますので、対応策の検討や導入に役立ててください。
目次
早期離職とは?
早期離職とは、採用した社員が3年以内に会社を辞めることです。学歴を問わず早期離職する社員は多く、新卒者だけでなく中途採用者でもみられ、企業の課題の一つとなっています。早期離職者が増えると、採用の準備や人件費、入社後の人事手続き、研修などのコスト、現場の負担などが増加します。
また、早期離職は既存社員のモチベーション低下や売上の停滞にもつながるため、企業にとっては大きなダメージです。入社した社員を戦力化し企業の成長につなげるためには、退職の原因を分析し、対策を進めて早期離職率を下げることが重要です。
早期離職の実態
厚生労働省が公表した令和2年3月に卒業した新規学卒就職者の離職状況(※1)から、早期離職の実態を見てみましょう。早期離職の割合は、新規高卒就職者が37.0%、新規大卒就職者が32.3%などとなっており、前年度と比較して上昇傾向です。
卒業区分 | 早期離職率 | 前年比増減 |
中学 | 52.9% | -4.9ポイント |
高校 | 37.0% | +1.1ポイント |
短大等 | 42.6% | +0.7ポイント |
大学 | 32.3% | +0.8ポイント |
ここ20年余りの学歴別の推移を見てみると、大卒は3割前後、短大等卒は4割前後の横ばいとなっています。一方、中学卒、高校卒ではやや減少傾向が見られます。
また、事業規模別の離職率は、高卒・大卒のどちらも小規模事業所ほど高いという結果です。特に事業規模が5人未満、5〜29人の事業所では、ほぼ半数が3年以内に離職しています。一番少ない1,000人以上の事業所と比較するとその差は倍以上になっています。
事業所規模 | 新規高卒者の早期離職率 | 新規大卒者の早期離職率 |
5人未満 | 60.7% | 54.1% |
5~29人 | 51.3% | 49.6% |
30~99人 | 43.6% | 40.6% |
100~499人 | 36.7% | 32.9% |
500~999人 | 30.7% | 30.7% |
1,000人以上 | 26.6% | 26.1% |
(※1)参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」
早期離職者が多い5産業
前出の厚生労働省の新規学卒就職者の離職状況(※1)では、産業別3年以内離職率も公開しています。新規高卒就職者と新規大卒就職者の離職率の高い上位5産業は、順位は少し異なりますが同じ業種が占めています。
たとえば、新規大卒就職者の産業別離職率は以下のようになっています。
順位 | 業種 | 離職率 |
1 | 宿泊業、飲食サービス業 | 51.4% |
2 | 生活関連サービス業、娯楽業 | 48.0% |
3 | 教育、学習支援 | 46.0% |
4 | 医療、福祉 | 38.8% |
5 | 小売業 | 38.5% |
一方、離職率が低い産業は以下のようになっており、こちらは低い順です。
順位 | 業種 | 離職率 |
18 | 電気・ガス・熱供給・水道業 | 10.5% |
17 | 鉱業、採石業、砂利採取業 | 13.5% |
16 | 製造業 | 19.0% |
サービス関連業は早期離職率が3割から5割と高いのに対し、製造業や公共事業関連では1割から2割と半分以下になっています。サービス関連業では、シフト制による不規則な労働環境や、人間関係によるストレスなどが離職率が高くなる原因だと考えられます。
(※1)参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」
早期離職が企業に与える影響(デメリット)
早期離職者が増加すると、企業にさまざまな影響をもたらす可能性があります。ここでは主なデメリットを3つ解説していきます。
企業イメージが下がる
企業イメージは、消費者の購買意欲を左右し、売上に影響を及ぼす重要な要素です。早期離職者が増えると、企業イメージに悪影響を及ぼす可能性があります。SNSの普及により、求職者は企業に関する情報や評判を簡単に手に入れることができるようになりました。
「残業が多い」「労働環境が悪い」など離職者が発信するネガティブな情報を目にすれば、企業のイメージ低下につながります。離職率が高い企業であることがわかると応募の段階で敬遠されてしまい、優秀な人材の採用が難しくなる可能性もあります。
採用・育成コストが増える
社員を採用する際は、広告宣伝費や採用担当者の人件費などさまざまなコストがかかるのが一般的です。また、入社後は戦力化するための研修や教育を行いますが、その過程でも開催費用や人件費などがかかります。
早期離職者が増えると、これまでのコストが無駄になるだけでなく、新たな人材を採用・育成する必要が出てきます。採用・育成コストだけでなく、指導や配属先の社員の業務負担も増え、企業の経済的・人的ダメージにつながるでしょう。
リーダーの育成に影響が出る
早期離職が続くと、経営者候補や管理職候補など次世代のリーダー育成にも影響が出ます。次世代のリーダーを育てるためには、適切な時期の研修受講やさまざまな経験が必要であり、時間がかかるものです。
優秀な人材を獲得しても定着することがなければ、企業で経験を積むことができず、次世代リーダーの育成はストップしてしまいます。会社を引っ張っていくリーダーが不在であれば、目標達成もおぼつかなくなり、将来の経営に対する不安につながるでしょう。
早期離職の理由
早期離職を防止するためには、離職に至る理由を知っておく必要があります。理由を把握することで問題点が明確になり、適切な対処法を検討できます。
労働環境や待遇がよくない
労働環境や待遇への不満は、早期離職でよくある理由の一つです。入社前のイメージよりも残業や休日出勤が多く拘束時間が長い場合、仕事がきつく感じ離職につながる可能性があります。
また、賃金が思ったよりも低い場合は、仕事をちゃんと評価されていないという不満につながりやすくなります。労働環境や待遇への不満からの離職を防ぐには、ワークライフバランスを向上させる施策や適切な評価制度の導入が必要です。
職場の人間関係が合わない
上司や同僚との人間関係の不和も早期離職の理由の一つです。一日の大半を過ごす職場において人間関係に問題があると、その場から離れたい、転職したいという気持ちにつながりやすくなります。
対立したり、ハラスメントを受けたりすることの他、なかなか職場に馴染めない場合も離職の原因になります。上司や同僚が新規入職者を気にかけ、こまめなコミュニケーションを取るようにしましょう。相談しやすい雰囲気を意識し、悩みや不安を解消できる体制を整えて良好な人間関係構築をサポートすることが大切です。
仕事に対するやりがいを感じない
入社前にイメージしていた仕事と実際の業務内容に隔たりを感じた場合、仕事に対するやりがいが持てず離職につながることがあります。厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概要」(※2)の離職理由では、「満足のいく仕事内容ではなかった」が上位という結果です。
また、高いモチベーションで業務に取り組んでいたにも関わらず評価されない場合もやりがいが欠如していく要因になります。採用段階でミスマッチがあった場合も同様です。仕事や報酬制度、求める人材などについて正しい情報を伝えておくことが重要です。
(※2)参考:厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概要」
今後のキャリアが描けない
自己成長が見込めないなど今後のキャリア形成に対して不安を持つ場合も離職の理由にあげられます。近年では、以前のように終身雇用で定年まで勤める働き方だけでなく、自身でキャリアを築きたいと考える人が増えてきました。
ステップアップのために資格を取るなどスキルアップを望んでいても、会社にそのような環境がないと離職につながる可能性があります。社員が経験やスキルを身につけられるような環境を作り、キャリアパスを描きやすくなるような配慮が求められるでしょう。
会社の将来に不安がある
入社するとそれまでイメージしていた企業像だけでなく、具体的な会社の状況が徐々にわかってきます。業界内での自社の立ち位置や売上の低下などを目の当たりにし、企業の将来性への不安から転職を考える人も出てきます。
社員の不安を解消するためには、経営計画や今後の見通しなどを経営層と社員が共有することが大切になります。目標達成するために求める役割なども伝えることで、社員のモチベーションやエンゲージメントを高めることが可能です。
早期離職を発生させない対策方法7選
ここでは、早期離職を防止する対策を7つ解説します。早期離職を防止するためには採用段階、入社後、育成期などフェーズごとに対策を講じ、モチベーションを向上させることが大切です。
採用ミスマッチを防ぐ
採用時の情報発信の内容を変えることにより採用ミスマッチを防ぐことが可能です。これにより、自社に適した人材を採用でき、早期離職の可能性を軽減できます。自社の良い面だけでなく、仕事内容や待遇、厳しさや課題などを伝えておくことが重要です。
情報が多いと求職者側も安心・納得して応募できるため、入社後の業務ストレス軽減にもつながります。職場を見学してもらい、職場の雰囲気や企業風土を理解してもらうことも大切です。
育成・研修制度を整える
育成・研修制度を整え、若手のスキルアップを促すなど学びの場を積極的に設けることも離職防止に有効です。学びの場の提供は、社員のモチベーションを向上させるために重要な施策であり、段階に応じて定期的に実施することが必要です。
研修に参加することにより自身の成長を感じスキルアップへの不満が解消されれば、定着につながります。効果的な育成を行うためには、各社員に適した研修を行う必要があるため、育成計画を立て、効率的に研修を行いましょう。
定期的に面談を実施する
若手社員は不安や不満を周囲に話せず、一人で抱え込んでしまうことがあります。そのまま放置してしまうと離職への気持ちが高まってしまうため、定期的なフォローが大切になります。
1on1ミーティングなど定期的に面談を実施すると、コミュニケーションの機会も増え、離職防止に効果的です。部署外の先輩と対話の場が持てるブラザー・シスター制度などを取り入れると、業務以外の会話もできストレス解消にもつながります。
労働条件を見直す
労働条件や待遇が離職の原因の場合は、自社の労働環境を振り返り見直すことが必要です。近年の若手世代はワークライフバランスを重視する傾向があるため、柔軟な働き方を検討しましょう。「フレックスタイム制」や「時短勤務制」などを導入すると、社員のストレスを軽減できる可能性があります。
また、仕事が正当に評価されないとモチベーションが低下し離職につながりますので、成果を反映した評価制度を整えることが大切です。客観的で正当な評価制度が構築できれば、既存社員のモチベーションアップにもつながります。
企業の経営方針を共有する
企業の経営方針や課題を共有し、立場や期待している役割を伝えると社員のモチベーションが高まり離職防止に効果的です。入社式などで企業のトップが直接伝えるようにすると、社員のエンゲージメント向上にもつなげられるでしょう。
入社後に、組織における自分の存在意義への悩みや迷いがあると離職につながることがあります。経営方針などを共有すると、自分の行っている仕事の重要性が分かり、期待されている実感を持って働けます。業務遂行においても、目標に対し方向を間違えずに進んでいけるのもメリットです。
育成担当者のマネジメント力を伸ばす
育成担当者が部下の価値観や特性にあわせて適切な指導ができるように、マネジメント力を伸ばすことも離職防止効果があります。育成担当者に「コーチング研修」や「フィードバック研修」を行うことで、マネジメント力向上が可能です。
若手社員は育成担当者の指導方法や上司の言葉遣いからストレスを感じることがあります。自分に合った指導を受けられるとストレスや不満が軽減され、離職防止につながります。マネジメント力を伸ばし、各人に対し最適な育成や指導ができると、社員のスキルアップ向上に効果的です。
キャリアデザインの機会を提供する
社員に今後のキャリアプランを立てる機会を提供することも大切です。普段、業務を行いながらではキャリアプランを考える余裕などないため、そのための場を設けるようにしましょう。キャリアデザイン研修を実施したり、自社でどのようなキャリアが築けるのか昇格制度なども提示するようにします。
社員は自分の将来の姿がイメージでき、そこに向かって何をしたらいいのかが具体的にわかるようになります。会社に残る意義が見出せるようになり、モチベーションを保ちつつ働けるようになるため、離職防止に効果的です。
早期離職防止のため、各部門が連携し施策の見直しを実施しよう
早期離職を防止するには、ミスマッチを防ぐなど採用段階からの準備や対策が重要です。また、離職率が高いサービス関連業などでは、労働条件を見直すことで自社の魅力を高めることができ定着率向上につながります。
離職率を下げる対策方法は、労働環境や働き方の変化への対処法としても有効です。経営、人事、教育などの部門が連携し現状施策見直しを行って、働きやすい環境作りを進めることが大切です。
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