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ファインチューニング(Fine-tuning)とは?その仕組みからメリット・デメリットまで解説

ACES Meet blog-ファインチューニング(Fine-tuning)

更新日:2024年03月27日

公開日:2024年03月27日

「ファインチューニング」という言葉を耳にするものの、どのような技術なのか説明できる方は少ないのではないでしょうか。ファインチューニングとは、学習済みのモデルに少ない労力で新しいタスクを覚えさせる技術です。仕組みが似ている技術との違いや活用方法がわかると、自社の業務効率化に役立つ可能性があるでしょう。

この記事では、ファインチューニングの概要や仕組み、メリットやデメリットについて解説します。

ファインチューニングとは?

ファインチューニングとは、すでに学習済みのモデルを新しいタスクに合わせて微調整する技術をいいます。

たとえば、画像に何が写っているかを学んだコンピューターのモデルがあるとしましょう。このモデルは犬と猫を見分けるのは得意ですが、新たに花の種類の識別をさせたい場合、最初からすべてを学び直すのには労力がかかります。

新しいことを学ぶ労力を最小限にするために、犬と猫の識別モデルをベースにして、花の画像を判別できるよう微調整を行うのがファインチューニングです。

ファインチューニングを用いると、少ないデータや時間で効率的に学習させることができます。つまり、ファインチューニングはすでにある知識を新しい問題に応用し、モデルをより賢くする方法といえるでしょう。

ファインチューニングの仕組み

ファインチューニングの仕組みを知るには、新たなタスクの追加の流れを理解するとわかりやすいでしょう。ここでは、犬と猫の識別モデルに、花の種類を識別するタスクを追加で入れる場合の方法を解説します。

ACES Meet blog-ファインチューニングとは
  1. 既存のモデル(犬と猫を識別するモデル)を用意
  2. 既存のモデルに新たな層(新たなタスクを入れ込むための層)を追加
  3. 新たな層に追加のタスク(花の種類を識別するタスク)を学習させる
  4. 一部または全体を微調整する

まずは、既存のモデルである犬と猫を識別するモデルを用意します。ここで用いるモデルには、新たに追加したいタスクである「識別機能」をすでに有するものが必要です。

次に、既存のモデルに追加のタスクを入れ込むために、新しい層を作って準備をしておきます。最後に、追加した新たな層に花の種類を識別するタスクを学習させ、全体を微調整すれば完了です。

上記の流れにより、コンピューターは新しいタスクに対しても高い性能を発揮できるようになります。ファインチューニングにより、学習にかかる時間や必要なデータ量を大幅に減らすことができるため、効率的な学習方法といえるでしょう。

ファインチューニングと転移学習・蒸留の違い

ファインチューニングを学ぶ際「転移学習」「蒸留」などの理解を求められることは多く、混同する人もいるでしょう。それぞれはファインチューニングと仕組みが似ているものの、アプローチが異なります。

ファインチューニングと転移学習の違い

転移学習とは、異なるタスクから得た知識を新しいタスクに適用することをいいます。

前項では、ファインチューニングについて、既存のモデルに対し軽微な調整を行う技術と説明しました。たとえば、すでに学習済みである犬の識別モデルに、猫の識別タスクを新しく追加するためにはモデルの一部を微調整します。

一方、転移学習とは、あるタスクで学習した知識をまったく異なる別のタスクに適用する技術です。たとえば、犬の写真の識別を学んだモデルの知識を使い、猫の写真の識別モデルを別途で作ることをいいます。最後の微調整を行う部分も、追加した層に関する一部のみです。

ACES Meet blog-ファインチューニング-転移学習とは

ファインチューニングは転移学習の一つといえますが、転移学習はより広い概念を指します。

ファインチューニングと蒸留の違い

蒸留とは、大きな学習済みモデルから重要な情報を抜き出し、小さなモデルに伝えることをいいます。

前項では、ファインチューニングについて、既存のモデルに対し軽微な調整を行う技術と説明しました。たとえば、すでに学習済みである犬の識別モデルに、猫の識別タスクを新しく追加するためにモデルの一部を微調整します。

一方、蒸留は、大きな学習済みモデルが持つ思考方法を小さいモデルに学ばせる技術です。大きい学習済みモデルから学ぶことで、小さいモデルであっても高い性能を出せるようになります。

ファインチューニングと蒸留はどちらもモデルを改善する方法ですが、ファインチューニングはタスクの適応、蒸留は効率と速さの向上に焦点をあてているといえるでしょう。

ファインチューニングのメリット

ファインチューニングの仕組みは理解できたものの、活用にどのようなメリットがあるのかわからない人は多いでしょう。作業効率が上がるだけでなく、モデル全体の質が向上する点を理解しましょう。

転移学習の利用による大幅な工数の削減

ファインチューニングは転移学習を利用した技術であるため、新しいモデルを作成する際の工数を大幅に削減できます。転移学習は、大量のデータで学習されたモデルを用いるため、一から訓練する必要がありません。作成者がモデルの初期化や大量のデータ収集を行う労力を、大幅に削減できます。

ファインチューニングは、速く大量にモデルを作らなければいけない状況において、有効な手段であるといえるでしょう。

少ないデータでも高精度なモデルの作成が可能

ファインチューニングは、少ないデータでも高精度なモデル作成が実現できます。転移学習の一つであるファインチューニングは、すでに存在するモデルの特徴を抽出し、共通部分を使い回すシステムです。新しいタスクの教育には既存モデルの知識を転用できるため、わざわざ大量のデータを用意する必要がありません。

既存モデルは豊富な知識を持っているため、回答のクオリティを高く保つこともできます。ファインチューニングにより、限りあるリソースを最大限に活用しつつ質の高い情報を引き出すことが可能です。

AIモデルの性能の向上

ファインチューニングは、新しいタスクを追加する際にモデルの全体、または一部へ微調整を行う技術です。ファインチューニングを行うと、モデルの性能がさらに向上し回答の質が高まります。既存モデルに微調整を加えることで、タスク固有の細かな特徴を捉えられるようになり、結果として全体の性能が向上します。

モデルに新しいデータやフィードバックを取り入れ定期的に更新することで、変化の多い環境でも柔軟な対応が可能です。ファインチューニングは、ユーザーの使用感やビジネスでの成果を高めることにも役立ちます。

ファインチューニングの注意点

ファインチューニングを行うには、メリットだけでなく注意点があることも事実です。行う際の準備が必要な点や、ある程度お金がかかる点を理解しましょう。

適切なデータセットを用意する必要がある

ファインチューニングを行うには、適切なデータセットの準備が必要です。事前学習済みのモデルを新しいタスクに適応させるには、正しく動作を行うための質の高いデータが必要となります。

情報量が少ない、または内容が偏っているデータの使用は、モデルの過学習や性能低下のもとです。データの質がファインチューニングの結果に影響を与えるため、適切な学習には用いる情報の慎重な検討が求められます。

コストが発生する

ファインチューニングを行うには機能が装備されたツールを使用する必要があり、利用にあたりお金がかかります。ファインチューニングはOpenAIのGPTをはじめとしたツールで行うことが可能です。しかし、ファインチューニングでの利用にはお金がかかるため、あらかじめ金額を知っておく必要があるでしょう。具体的な料金体系は、以下のとおりです。(2024年3月時点でのレート換算)

  • 学習:1,000トークンあたり0.008ドル(約1.20円)
  • 入力:1,000トークンあたり0.012ドル(約1.81円)
  • 出力:1,000トークンあたり0.016ドル(約2.41円)

※内容にもよりますが、1,000トークンはおよそ3〜5ページの短いレポートほどの量

データ量によっては高額になる場合もあるため、利用の際にはコスト管理にも気を配りましょう。

ファインチューニングの活用例

ファインチューニングは、実際どのようなことに活用できるのか気になるところです。ファインチューニングがすでに用いられているものや、今後実現の可能性のあるサービスを理解しましょう。

画像認識

ファインチューニングは、画像認識タスクにおいて広く活用されています。本記事の導入では、写真に写る犬と猫の識別モデルに花の種別を見分けるタスクを追加する例を挙げました。画像の内容を識別できれば、今後は医療分野での解析に役立てられる可能性があります。

たとえば、ファインチューニングをレントゲン写真やMRI画像などに応用すれば、体の変化にいち早く気づき、すみやかな対応が可能となるでしょう。ファインチューニングによる画像認識タスクは、医療分野の写真の分類や物体の検出などで役立つ可能性があります。

音声認識

ファインチューニングは、音声認識の分野においても幅広い活用が期待できます。一般的に、音声認識を行うには、大量のデータや複雑なシステム構築が必要です。しかし、ファインチューニングなら、既存のデータを特定のタスクに適応させれば音声認識モデルをスムーズに構築できます。

たとえば、音声データを特定のアクセントや専門用語が含まれるデータセットでファインチューニングすると、多様な言い回しへの対応が可能です。顧客サービスの自動応答システムや音声入力機能などで、ユーザーの声を正確に理解し対応できるようになります。

自然言語処理(NLP)

ファインチューニングは、自然言語処理(NLP)の分野でも活用できます。自然言語処理とは、コンピューターが人間の言葉を理解し、文章や音声を生成する技術です。コールセンターでの問い合わせ対応やチャットボットなど、文章を用いる分野で活躍しています。

ファインチューニングを自然言語処理で用いると、文章からユーザーの感情に合った答えを導き出すことも可能です。ユーザーの感情に沿った言葉選びを行えるようになるため、カスタマーサービスでの活躍も広がっていくでしょう。

推薦システム

ファインチューニングは、マーケティングに用いられる推薦システムでも効果を発揮します。推薦システムとは、膨大な商品情報の中からユーザーに適したものを表示するシステムです。大量のユーザーデータで学習されたモデルをニーズに合わせて微調整することで、推薦の精度を向上させることができます。

ファインチューニングにより、ユーザーは自分でも意識していなかった深層ニーズにもとづいた選択が可能です。オンラインショッピングや動画サービスにおいて、ユーザー体験や満足度の向上に役立ちます。

自動運転技術

ファインチューニングは、自動運転技術においても影響をもたらしています。自動運転技術とは、自動車が周りの環境を認識・判断し、自動で運転操作をする技術です。ファインチューニングは、自動運転技術を交通状況や気象に適応させることで力を発揮します。

ファインチューニングを行うことで、自動車は障害物の発生や悪天候のような突発的な状況においても対応が可能です。自動車がいち早く異変に気づくため、運転者はどの地域でも安全に走行することができます。

ファインチューニングのメリットを知り業務効率化を

ファインチューニングを行うと、学習済みのモデルに少ない労力でタスクを覚えさせることが可能です。チャットボットや推薦システムなどに用いられており、業務の効率化やサービスの質の向上に役立っています。

ファインチューニングのメリットや用いられているサービスを知り、自社の業務効率化に役立てましょう。

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執筆者

ACES Meet 編集部

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