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OJTを実施する目的からやり方、押さえておきたいポイントを解説

更新日:2024年04月26日

公開日:2024年04月26日

OJTは、新入社員教育などに導入される実践訓練型の育成手法で、企業でも広く導入されています。即戦力の人材を育成するのに効果的な手法ですが、実際に導入するとなるとどのように取り組めばよいのかやり方に悩む人もいるでしょう。

この記事では、OJTの概要や目的、デメリットと対策、実施する際の手順、成功させるためのポイントについて解説しています。やり方やポイントを押さえて、上手にOJTを導入していきましょう。

OJTとは?

OJTとは「On-The-Job Training」の略で、業務に必要な知識や技術を現場で実践を通して指導する育成方法のことです。OJTの対象者は新入社員や業務未経験者で、個人のスキルや習得度に合わせた指導ができるのが特徴です。

たとえば、先輩の営業に同行したり、上司の指導のもと接客したりするのもOJTの一環になります。指導役は上司や配属先の先輩が行うため、普段の業務を実際に即して学べます。現場で実務につくので、教育期間中から職場になじみやすくなるのもメリットです。

OJTであれば研修だけでは身に付かないスキルやコツを学べるため、即戦力が期待できます。マンツーマンで指導するのが基本ですので、疑問や不安などを相談しやすく、モチベーションの向上にも効果的です。

OJTは教育を受けながら職場でコミュニケーションが取れるため、社員の定着化にもつながります。企業によってはOJT専門の教育担当者がいることもあり、外部に依頼して行う場合もあります。

参考:OJT(On-the-Job Training)とは?企業と社員のメリット、デメリットを解説

OJTを実施する目的

OJTを効果的に実施するためには、指導役となる上司やトレーナーが目的を把握しておくことが重要です。目的や計画が曖昧なままでは効果的に実施することは困難です。OJTの主な目的には以下の5つがあげられます。

新入社員やOJT対象者のスキルアップ

OJTは、新入社員や特定の役割に就く社員が実際の業務現場で必要なスキルや知識を習得するのに効果的です。現場に合わせたカリキュラムが組めるため、効率良く新人教育ができます。新入社員と中途社員では能力や知識に大きな差がありますが、OJTなら個人のレベルに応じてプログラムをたてられます。

実践的な経験を通じて、業務の要領や技術を直接身につけられ、個人の習得度に合わせた指導やフィードバックが可能です。研修を受けるだけの育成とは違い、アウトプットの機会があることでスキルが定着しやすくなるため即戦力が期待できます。

また、ビジネスマナーやコミュニケーション能力などの向上にも役立ちます。これらも実践的な指導になるため、現場でよく使うビジネス表現や対応方法を直接学べるのが良い点です。

トレーナーやリーダー・管理職のスキルアップ

OJTでは、トレーナーやリーダー、管理職などの指導者のスキル向上も図れます。指導者として業務の目的や流れを説明するためには、自分の仕事を深く掘り下げアウトプットする必要があります。それらは指導するときだけでなく、今後の自らの仕事にも役立つでしょう。

また、自分の業務をしながらOJT教育に取り組むため、マネジメント能力も磨かれます。自分の時間をうまく配分することが求められますので、結果として自身の生産性向上も可能です。OJT対象者への指示やフィードバックを通じて他者の成長を促すスキルやリーダーシップ能力の向上も期待できます。

社員の定着率の向上

OJTには、社員が組織に定着しやすくなる効果もあります。新入社員が配属先の業務や人間関係に慣れない時間が長いほど、離職率は高まります。しかし、早い段階でOJTを行うことによってそのどちらも短縮することが可能だからです。

新入社員やOJT対象者が適切な指導を受けられると、自信を持って業務に取り組めるようになります。組織に貢献している実感を得ることもでき、モチベーションも向上するでしょう。その結果、離職する社員が減少し、離職率は低下します。

OJTでフィードバックや改善点を洗い出していくことで、新入社員が自己成長していくことも見込めます。自分がどのように役に立てるか考え、組織内でのキャリアパスを見出すことにもつながるでしょう。

人間関係の構築

OJTは、社員同士や上司と部下との間で良好な人間関係を築く機会を提供してくれます。新しい職場で一から人間関係を作るときには、声をかけづらかったり、疑問があっても聞きにくかったりすることがよくあります。

OJTを実施することにより指導者と定期的に話す機会が持て、悩みや不安があっても相談しやすい環境を作ることが可能です。これにより新入社員が悩みやストレスを抱え込むことが防げますので、早期離職を回避できます。

また、共同作業や相互の支援を通してチームワークやコミュニケーション能力が向上するため、組織内の協調性も高まるでしょう。

組織全体のパフォーマンスの向上

OJTによって個々の社員やチームの能力が向上すると、組織全体のパフォーマンスも向上します。育成対象者は必要な知識やスキルを早期に習得することで、業務効率や生産性が向上します。

トレーナーや指導者も適切なフィードバックや指導をすることで、自身のスキルアップやモチベーションアップが可能です。このような社員のスキル・知識の継続的な向上は、組織全体の業務の効率性や品質の向上につながります。

また、OJTによって定着率が向上することで人材の継続的な育成と活用が可能になります。結果としてOJT導入により社員の相互成長と組織のパフォーマンス向上、人材の流出防止、継続的な企業成長が期待できるでしょう。

OJTを実施する際のデメリット

新入社員の戦力化や組織全体の生産性の向上に役立つOJTですが、実施することによるデメリットもあります。前もってデメリットを知り対策を考えておくと、OJTが成功する可能性が高まります。

人的リソースを割く必要がある

OJTのトレーナーや指導者は自身の業務をこなすかたわら、時間を割いて新入社員やOJT対象者を指導するのが大半です。そのため、本来業務に割く時間が減少し、支障が出る可能性もあります。指導者の精神的・業務的な負荷が高い場合は、十分な指導ができなくなることもありますので配慮が必要です。

また、OJTを受ける社員も一時的に業務から離れる必要があるため、生産性の低下が発生する場合があります。職場全体の生産性が大きく低下しないようなOJT計画を考えることが重要です。職場の業務分担を見直すなど、十分なリソースを確保しながら実施できるようにOJTプログラムを計画しましょう。

OJT担当者のスキルによって成果が左右される

OJTは指導担当者のスキルや経験によって結果が大きく左右されます。指導する際には適切な指導法やフィードバックの提供、コミュニケーション能力が必要です。指導者が十分な教育能力や業務知識を持っていない場合、OJTプログラムの質や効果が低減する可能性があります。

トレーニングに差が出ないように、指導者向けの研修を行うなど、教育スキルを上げるようにしましょう。指導者を選出する際には、育成するための研修参加や教育に関してポジティブに捉える人が適任です。

一般的に指導者は中堅社員や教育部門から選出しますが、専門のトレーナーを外部に依頼することも考慮してみましょう。

OJTのやり方・手順

ここからはOJTの実施方法や手順を具体的に解説していきます。一通りやって終わりではなく、この4つのサイクルを回しながら目標達成に近づけていくとよいでしょう。

Show:やってみせる

まずはじめにトレーナーまたは熟練した社員が実際の業務をデモンストレーションします。口で説明するだけではなくトレーナーが電話をかけてやり取りしたり、パソコンを使ってお手本となる作業をしたりします。

実際の仕事の進め方を見ることでOJT対象者は業務の流れや手順を視覚的に理解できるようになるでしょう。実務をリアルに体験することで知識や概念を具体的な行動に結びつけ、実践的なイメージをつかむことができるようになります。

Tell:説明・解説する

次に指導者が実行した業務の背景にある理論やプロセスを説明しますが、ただ流れを説明するだけでは不十分です。なぜ特定の手順が実施されたのか、その業務がどのように全体のプロセスに組み込まれているのかまで解説します。

それによってOJT対象者は業務の目的や背景まで理解を深めることが容易になります。解説にあたっては、工程ごとに対象者がきちんと理解できているか、不明点や疑問点がないか確認するようにしましょう。

説明の際には対象者の持つスキルや知識の習得段階に合わせて、理解しやすい言葉や態度で伝達することが大切です。

Do:やらせてみる

解説した後はOJT対象者に実際に業務を行わせます。これによって対象者が本当に理解できているか確認できます。業務を見ながら得た知識や理解を実践し、経験を積むことで対象者のスキルや自信を高めていきましょう。

トレーナーや指導者は、OJT対象者が実践する際に適切なフィードバックやアドバイスを行います。タイミングを逃さず指導することで対象者の理解力も高まります。一度教えただけでは完璧にはできないことも多いので、必要に応じてサポートも行いましょう。

この段階ではOJT対象者が実践を通じてスキルを磨き、自信をつけることが重要です。指導者はあくまでサポートするだけにとどめ、方向性を示しつつ対象者が自分で目標達成できるように導くことが肝心です。

Check:評価・追加指導する

実践が終了した後、指導者は対象者のパフォーマンスを評価します。評価の対象は業務の成果やコミュニケーション能力などです。達成度や改善点をフィードバックし、追加の指導やトレーニングが必要な場合はそれらを提供します。

できていなかった点を指摘するだけでなく、うまくできた点は褒めることが肝心です。失敗点についてはなぜできなかったのか、どうすればできるようになるかわかりやすく説明します。Tellの段階で伝えきれなかった業務のノウハウなどもここであわせて教えていきます。

ここではOJTを受けた本人も自己評価を行い、理解度やスキルの向上を確認しましょう。現時点での評価をもとに今後のプログラムを立て、目標に到達するまで「Show」から「Check」の手順を繰り返します。

一度で目標達成を目指すのでなく、4つのプロセスを回しながら着実にスキルを身につけ、柔軟に目標見直しなども行います。

OJTを成功に導くために押さえておきたいポイント

OJTをやり方通りに実施してもすべての取り組みがうまくいくとは限りません。注意すべき以下のポイントを押さえて、OJTを成功させましょう。

OJTの目標を明確にする

OJTを開始する前には、明確な目標を設定することが重要です。目標がなければ評価するのが難しくなるからです。目標を立てる際には会社や人事担当者と、現場の上司などの指導者が一緒に設定するようにしましょう。

これは会社が期待する社員像と、現場が求める業務遂行能力に乖離がないようにするためです。これにより全社一体となって育成する体制を整えることができます。

目標設定には、OJT対象者が習得すべきスキルや知識、成果物の期待値などを具体的に示します。目標が明確であれば、トレーナーや対象者が方向性を理解し、成果に対する期待がはっきりするからです。

OJT対象者の能力向上だけでなく、業務効率の改善なども視野に入れた目標を設定し、カリキュラムを計画しましょう。

OJT対象者の現状を把握する

OJTを成功させるためには、対象者の現状を把握することが不可欠です。これには対象者のスキル、知識、経験、学習スタイルなどの評価が含まれます。

新卒社員であれば、基本的なビジネスマナーや業務知識、技術の習得から始める必要があります。他部署からの異動や中途社員であれば職種や業界の経験、習得しているスキルのレベルによって指導内容を変えなくてはなりません。

OJTプログラムは個々の対象者のニーズやレベルに合わせてカスタマイズすることが重要です。対象者の情報をもとに適切な教材やトレーニング方法を選択し実施しましょう。

適切なトレーナーを選出する

OJTの成功には、経験豊富でコミュニケーション能力の高いトレーナーが欠かせません。指導力を持ち、対象者に対して理解とサポートのできる人材を選びましょう。適切なトレーナーを選出する際には以下のことに注意が必要です。

  • 業務に関する専門知識やスキルを有していること
  • フィードバックを提供し、適切な指導を行う能力があること
  • コミュニケーション能力が高くOJT対象者との信頼関係を築けること
  • スケジュールなどの調整力があること
  • OJTプログラムの目標やカリキュラムに適合すること

トレーナーとして指導するには業務の専門的な知識や技術、スキルがあることが前提です。その上で教育力やコミュニケーション能力、マネジメント能力がある人に適性があります。OJTプログラムの目標やカリキュラムに適合する人材であることも必要です。

また、トレーナーには時間的な余裕があり、教育に関して前向きな意識を持って取り組める人が適任です。そのような人ならば指導者向けの研修にも進んで参加してくれるでしょう。

OJTはやり方のポイントを押さえて実践を

OJTは新入社員と指導者のそれぞれが成長できる育成手法です。社員の定着やパフォーマンス向上にも役立つため、積極的に取り組む企業が多く、成果をあげるのに役立っています。

OJTを行う際は、目標に対する進捗確認や、目標調整、コミュニケーションを取るなどして継続して取り組むことが重要です。ただし、人的リソースの確保やトレーナーの選出には十分な配慮と注意が求められます。

OJTを成功させるためには、しっかりとした目標設定や手順を把握することが大切です。

指導者に任せきりにせず、企業全体で育成に取り組む姿勢を持つと効果的に行えるでしょう。OJTを導入し、自社のパフォーマンス向上に活用していきましょう。

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執筆者

ACES Meet 編集部

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