MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?作り方や企業事例、浸透させる方法を紹介
更新日:2024年03月19日
公開日:2024年03月19日
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)は、企業の使命や指針を表す重要な存在です。
しかし、せっかくMVVを導入しても効果的な運用ができていなかったり、必要性や意義が曖昧なままになっているケースもあるかもしれません。
この記事では、MVVの概要やメリット、策定のタイミングや手順について解説していきます。MVVをうまく浸透させた企業の事例も紹介しますので、自社にとって効果的なMVVを策定する参考にしてみてください。
目次
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?
MVVとは、「Mission(ミッション)・Vision(ビジョン)・Value(バリュー)」の頭文字をとった言葉で、企業のあり方を表しています。
ミッションは、会社の存在意義や使命、果たすべき役割のことです。ミッションが明確であれば社員は責任感を持って仕事に取り組むことができます。
ビジョンは、企業の目指す理想像や、目標を実現したときの状態のことです。ミッションにより使命を果たした結果、企業がどのような状態になるのか方向性を表します。バリューは、ミッションとビジョン達成のために必要な行動指針や価値観を表します。
ミッションやビジョンが抽象的で大局的な内容になるのに対し、バリューは社員が取るべき行動を具体的にわかりやすくする役割があり、これにより業務で実践が可能となるのです。
企業はミッション達成のためにビジョンを実現する必要があり、そのためにより具体的な価値基準としてバリューを定めるという関係性になります。
MVVと企業理念の違い
企業理念とは、会社の創業者が社会に対しどのような価値を提供するか定めたものです。企業の存在価値や存在目的といった、企業が大切にすべき価値観を表しています。企業理念は経営者や時代が変わっても変わらず存在する物であり、ゴールが変更することにより再策定されるMVVとは異なります。
MVVと経営理念の違い
経営理念は、経営の際の方針や手段を明文化したものです。経営者の交代や時代の変化によって、経営方針が大きく転換される場合には、経営理念も変更されます。会社の存続のために必要な基本的な活動方針を言語化したもので、企業が実現したいゴールを表します。
MVVと行動指針の違い
行動指針は企業理念・経営理念を達成するために社員はどのように行動したらよいのか具体的に表したものです。
企業理念とミッション、行動指針とバリューは同じような意味で扱われることも多く、MVVとの違いを定義することは難しいとされています。
この二つの概念を組織内で効果的に活用するために、OJT(On-the-Job Training)やオンボーディングのプロセスが重要になります。OJTを通じて、社員は実際の業務を行いながらMVVや行動指針を学びます。また、オンボーディングでは、新入社員が企業文化を理解し、組織に溶け込むことができるよう支援できるでしょう。
参考:OJT(On-the-Job Training)とは?企業と社員のメリット、デメリットを解説
参考:新卒社員向けのオンボーディングとは?成功させるポイント5選
参考:中途社員向けのオンボーディングとは?導入すべき理由や手法を解説
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定するタイミングはいつ?
MVVを策定するタイミングは特に決まっていませんが、起業時をはじめ、組織規模が大きくなる前がベストだといわれています。また、社会情勢や市場に変化があり、経営戦略を大きく変えるときなどにも策定・変更されます。
MVVは会社の方向性を示すものです。はじめに事業のゴールを明確にしておくと、社員全員で認識・共有することができ、実現につなげることが可能となるからです。経営の状況やビジネス環境の変化によって途中で修正する場合には、それまでの方針にとらわれず、柔軟にMVVを変更しましょう。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定するメリット
MVVを策定すると、人事採用の面で指標となったり、経営判断の指針になるなど、企業にはさまざまなメリットがあります。
企業と人材のミスマッチを避けられる
MVVは人材採用の際の指針となりますので、それに沿って採用活動することで自社に合った社員を効率的に採用できるようになります。人事部や役員との人材選考の方針が統一されるため、採用の際にどのような方針で選考を進めればよいかが明らかになり、採用活動に一貫性が生まれます。
また、MVVを策定し企業のHPや採用ページなどで公開しておくと、自社のMVVに共感し納得する人材を集めることが可能です。これにより、企業と働く人のミスマッチを避けることができ、入社後、「こんなはずじゃなかった」などという価値観の違いなどで離職することを防止でき、離職率の低下につなげられます。
一方で、転職する側から見ても会社のMVVは重要な意味があります。MVVは社員全員が目標達成に向かっていくことが前提です。会社の大切にしている価値観に共感できてはじめて自分に合った会社ということができます。MVVをよく理解して応募することで、やりがいを持って働ける会社を選択することが可能になります。
従業員エンゲージメントが高まる
MVVを設定することで社内全員が同じ行動指針を持ち、会社に対して貢献しようとする意識をより高めることができます。その結果、社員のモチベーションがアップし、長く会社で働こうという気持ちになったり、会社に貢献していることで満足度が上がり、従業員エンゲージメントが向上します。
従業員エンゲージメントの向上は、職場のより良い雰囲気づくりにも役立ちますし、離職防止や生産性アップに効果的です。
社員全員が共通の指針を持てる
MVVを社員全員と共有することで、社員一人ひとりが企業と同じ価値観や行動指針を持つことができます。それにより、自分の業務や職場全体の役割が確認でき、どのように進めていくべきかはっきりするので、より良い協働体制の構築が可能です。
社内の円滑なコミュニケーション促進にもつながりますので、生産性の向上などが期待できます。
明確なCSRを設定できる
CSRとは「企業の社会的責任」のことで、企業には自社の社員や投資者、消費者、環境への配慮など多岐に渡る責任があるとされています。MVVを設定すればより明確にCSRの設定が可能になります。
CSRは、企業が社会や環境と共存し、社員や投資者から信頼を得ながら持続的に活動していくために重要な取組みです。明確なCSRを設定していることで、社会やステークホルダーからの信頼度向上が期待できます。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の作り方
次に、MVVを作る手順例を紹介します。はじめにさまざまな視点から情報収集や分析を行い、それを元にミッション、ビジョン、バリューを定めるようにすると効果的なMVVを策定できます。
PEST分析によって課題や使命を明確にする
PEST分析とは、事業戦略を作るためのフレームワークで、「政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)」の4つの視点から現状や環境について情報収集し分析を行うことです。
顧客を取り巻く環境や世の中の変化を捉えるために、まずはPEST分析を行い、自社の使命や解決したい課題を明確にしましょう。社会環境から分析することで大枠を捉えた、社員からも共感されやすいミッションの策定ができるようになります。
3C分析をする
3C分析とは、「Customer(市場・顧客)、Ccmpetitor(競合)、Company(自社)」の3つの環境を分析し、戦略を設計するためのフレームワークです。これは、顧客のニーズや競合の動きを分析するために行います。競合の動きも分析することで、自社はどのような影響を社会に及ぼしたいのかを明確にすることが可能です。
3C分析をすることで、ステークホルダーにも理解を得られるようなMVVが策定できます。
ミッションを定める
情報の収集や分析が終わったら、ミッションを定めます。PEST分析や3C分析を元に、自社が社会に対してどのような使命を背負うのかを、明確に言語化しましょう。どのような社会を目指し、価値を提供するのか存在意義を決めていきます。
ミッションは経営理念の中でも最も重要な概念といわれますので、納得のいくものを定めましょう。
ビジョンを定める
ミッションを明確化したら次にビジョンを策定します。ビジョンはミッションの達成で実現する、企業の理想像になります。ミッションと関連するビジョンにすることがポイントで、競合他社のMVVも参考にして、自社の分野らしいビジョンを考えましょう。
決定したビジョンは、社員や社会からわかりやすい端的な言葉で、印象の良いフレーズにすることも大切です。
バリューを定める
ビジョンが決まったら、最後にバリューを定めます。バリューはミッション・ビジョンの実現のため、社員はどのような行動をとるべきか、行動指針や価値基準を定めたものです。「顧客の立場に立つ」や「挑戦し続ける」など具体的な行動指標を示すことで、企業と社員が共有すべき価値観・行動がはっきりします。
バリューを策定する際は、わかりやすく言語化することが重要です。短い言葉でいくつかあげておくと、社員が覚えやすく実践しやすくなります。
よりよいMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を作るためのポイント
MVVを洗練された、より良いものにすると、社外からの印象も良くなり社員全体に浸透しやすくなります。ここではより良いMVVを作るために押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
社会情勢も踏まえて考える
MVVは社外への影響力もあるため、「第三者が見たときにどう思うか」を意識して考えることも大切です。SNSの普及により、情報がすぐに広がる時代ですので、他者の目線も取り入れて慎重に決定しましょう。
MVVは採用活動にも影響します。自社の魅力を伝えやすく、求職者が理解しやすい言葉選びをすることで、良い反響が期待できるようになるでしょう。
共感しやすい言葉を使う
MVVは、社員や社会が容易に解釈できるように、共感しやすい端的な言葉を使って表しましょう。同じ業界の有名企業のMVVなどを参考に、頭に残りやすいフレーズを使うのもよいでしょう。
経営者の意図がうまく伝わるような表現で、社員や社会が自身の価値観と照らし合わせて考えられるようなMVVを考えることが大切です。
社内全体に浸透させる
MVVを策定したら、社員一人ひとりがMVVに沿った行動や判断ができるように浸透させることが肝心です。策定しただけでは企業側の独りよがりや押し付ける形になってしまい、社員が反感や不信感を覚えてしまうかもしれません。
そうならないためにもMVVを策定する際は、どうやって浸透させるかも一緒に考えておきましょう。具体的な浸透させる方法については、次章で紹介します。
社内全体にMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を浸透させる方法
MVVを策定したら、理想を達成できるように社内に浸透させることが重要です。社内全体にくまなく浸透させるためには、以下のような方法が効果的です。
MVVの意味や意図を経営者から伝える
社員と共通認識を持つためにも、経営者が自らMVVについて発信したり、説明するようにしましょう。MVVを効果的に運用するには、社員がただ知っているだけでなく、きちんと理解することが重要だからです。
MVVが作られた意味や意図をわかりやすく伝えることで、社員は何を行えば会社に貢献できるのか理解しやすくなります。社内報での発信や、ウェブサイトを刷新することも有効です。
クレドカードを配る
クレドとは、企業の行動指針やバリューを表しており、クレドをカードに印刷し社員に配布する施策がクレドカードです。これは従業員第一主義で有名なリッツカールトンが行っていた施策です。
社員は配布されたカードを携帯することで、日々MVVを確認することができます。常に目につく場所に置くことで、バリューだけでなくミッションまで意識した行動や意思決定が取れるようになるといわれています。
社内報を作成する
社員向けに社内報を作成し、定期的に発行したり、メール、ウェブサイトなどでも配信します。社内報は情報の共有や社員間コミュニケーション促進に有効で、リモートワークを導入している企業でも活用が可能です。
定期的にMVVに関する記事やコラムを掲載することで、社員が取るべき行動を再認識させ、実践に導くサポートができます。
個別面談をする
MVVについて上司から部下へ、社員一人ひとりに具体的に説明を行う個別面談を実施しましょう。個別に面談することで、MVVの内容を直接会話を通して伝えられるため、解釈違いや認識不足がないか確認できたり、必要なフォローができるようになります。
社員全員に面談することは、時間はかかりますが確実に浸透させる手段として有効です。その際に、面談する上司側は、社員からの質問や疑問に答えられるようにMVVについて深く理解しておく必要があります。
人事評価基準に含める
MVVを人事評価の対象項目にしたり、表彰制度を導入したりすることで、社員がMVVを意識する状況をつくることができます。どのような行動や活躍が評価されるのか、ミッションを意識した基準を明確にすることで、社員は目標設定がしやすくなるからです。
行動指針に基づいた行いによって実績を上げた社員を評価・表彰すると、従業員エンゲージメントも向上しますし、ミッション・ビジョンの実現に近づきます。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定する企業事例
ここからはMVVを策定し、効果的に運用している企業を紹介します。他社を参考に、自社にピッタリのMVVを考えていきましょう。
ファーストリテイリング(ユニクロ)
ファーストリテイリング(ユニクロ)は、世界的にも有名なアパレルブランドです。こちらのMVVは、ステートメント、ミッション、バリューで構成されています(※1)。
- ステートメント:服を変え、常識を変え、世界を変えていく
- ミッション:本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します。独自の企業活動を通じて人々の暮らしの充実に貢献し、社会との調和ある発展を目指します。
- バリュー(私たちの価値観):「お客様の立場に立脚」「革新と挑戦」「個の尊重」「正しさへのこだわり」
文言がスマートで覚えやすい単語を使っており、誰でも理解しやすくなっています。バリューでは、ステートメントとミッションを達成するために大切な価値観が詳しく定められているのが特徴です。
(※1)参照:ファーストリテイリング「FAST RETALING WAY(FRグループ企業理念)」
デジタル庁
デジタル庁は、日本の行政におけるIT化・DX化を推進させるため、2021年に設置されました。行政手続きややり取りを便利にし、すべての人が暮らしやすい社会を目指すことを反映したMVVを掲げています(※2)。
- ミッション:誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を
- ビジョン:Government as a Service、Government as a Startup
- バリュー:「一人ひとりのために」「常に目的を問い」「あらゆる立場を超えて」「成果への挑戦を続けます」
わかりやすい端的な言葉を使っている好例です。
(※2)参照:デジタル庁「ミッション・ビジョン・バリュー」
キリンホールディングス
飲料を中心に扱うキリンホールディングスでは以下のようなMVVを定めています(※3)。
- ミッション:自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、心豊かな社会の実現に貢献する
- ビジョン:食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる
- バリュー:熱意・誠意・多様性(Passion、Integrity、Diversity)
食に関連するキリンならではの言葉を使ってミッションが立てられており、それを達成するための手段が明記されています。CSVを盛り込むことで、未来を見据えたビジョン計画であると印象付けられるMVVです。
(※3)参照:キリンホールディングス「企業方針」
ソフトバンクグループ
携帯電話事業などのIT企業を扱っているソフトバンクの掲げるMVVは、以下の通りです(※4)。
- ミッション(経営理念):情報革命で人々を幸せに
- ビジョン:「世界に最も必要とされる会社」を目指して
- バリュー:努力って、楽しい。「NO.1、挑戦、逆算、スピード、執念」
企業を象徴する「情報革命」というインパクトのある言葉や、MVVそれぞれを短くわかりやすい言葉でまとめているのが特徴です。
(※4)参照:ソフトバンク「理念・ビジョン・戦略」
MVVを効果的に運用し、理想を実現していこう
MVVは、企業の使命や理念、価値観、行動指針を表す点で大変重要です。MVVが効果的に運用できると、経営者の理念が社員全体に浸透し、一丸となって目標達成に向かって進んでいけます。新たに人材を採用する際も、MVVに沿った採用方針によって自社にマッチした候補者を効率的に選択できるようになります。
記事で紹介した「より良いMVVの作り方」や「浸透させる方法」を活用し、自社ならではのMVVを策定し、会社の目指す理想実現に役立てましょう。